これまで、オンラインショッピングの購買行動は、Google検索やECモール、あるいはECサイトへの直接アクセスから始まるのが一般的でした。
しかし、今、その購買行動が変わり始めています。
ユーザーは、次のような「会話」から商品を探し始めるようになるかもしれません。
「3日間の出張に使える、軽量で2万円以下の機内持ち込み用スーツケースを探して」
複数のECサイトを開き、条件を指定して商品を絞り込み、いくつものタブを行き来しながら比較する代わりに、ChatGPTとの会話を通じて、自分のニーズに合った商品を探し、候補を絞り込み、比較することが可能になります。
これはECにとって重要な変化です。
AIが、顧客とECシステムをつなぐ新しいインターフェースになりつつあるからです。
I. Search CommerceからConversational Commerceへ
2026年3月、OpenAIはChatGPTにおける新しいショッピング体験を発表しました。
ユーザーはChatGPT上で商品をより視覚的に探し、複数の商品を比較しながら、会話を通じて条件を追加・変更し、自分に合った商品を絞り込めるようになります。
その背景にある重要な仕組みの一つが、**Agentic Commerce Protocol(ACP)**です。
ACPは、Merchant側のコマースシステムとAI Agentを接続するためのレイヤーとして捉えることができます。
ACPを通じて、Merchantは例えば以下のようなコマース情報を提供できます。
- 商品カタログ
- 商品情報・価格
- プロモーション
- 在庫状況
- その他のコマース関連データ
重要なのは、こうしたAIコマースへの対応のために、企業がECプラットフォーム全体をゼロから構築し直す必要はないという点です。
OpenAIは、Merchantが現在利用しているコマースシステムを活用しながら、複数の方法でACPとの連携を実現できる方向性を示しています。
そこで、すでにECを運営している企業にとって、次のような現実的な課題が生まれます。
既存のコアシステムを置き換えることなく、現在のECシステムをChatGPTや今後のAIコマース体験とどのように接続すればよいのか?
II. 実際の課題は「APIを1つ追加する」だけではない
既存のECプラットフォームは、一般的に多くのシステムや機能から構成されています。
EC Frontend → Product / Catalog → Inventory → Pricing → Promotion → Order → Payment → Fulfillment
一方、AI Agentがユーザーに適切な購買体験を提供するためには、例えば以下の情報を正しく理解できる必要があります。
どのような商品が存在するのか?
ユーザーのニーズに合う商品はどれか?
現在の価格はいくらか?
利用可能なキャンペーンやプロモーションはあるか?
在庫はあるか?
ユーザーが購入を希望した場合、次に何をすべきか?
そのため、ACP対応は単純に新しいAPI Endpointを追加するだけでは完結しません。
企業は、既存ECが持つデータやBusiness Logicを、AI Agentが利用できるモデルへどのようにMappingするかを設計する必要があります。
特に長年運用されてきたECでは、商品情報、在庫、価格、プロモーションなどが複数のシステムに分散しているケースも少なくありません。
この部分をどのように整理・統合するかが、ACP導入における重要な設計ポイントになります。
II.Bunbuが考える、既存ECへのACP導入アプローチ
Bunbuでは、
「AIのために新しいCommerce Systemをどう作るか?」
から考えるのではなく、
「お客様がすでに持っているECシステムを、どうすればAI-readyにできるか?」
という視点から検討を始めます。
まず、現在のシステムアーキテクチャを整理します。
Existing EC System
↓
Product / Inventory / Pricing / Promotion / Order APIs
↓
ACP Integration Layer
↓
ChatGPT / AI Agent
↓
Customer
その上で、主に3つの観点から検討を進めます。
1. ACP Readiness Assessment
最初に、既存ECに存在するデータやAPIのうち、どこまで再利用できるかを評価します。
例えば、
- Product APIには必要なAttributeが揃っているか?
- Inventory情報は十分な頻度で更新されているか?
- 価格やPromotionはどのシステムで管理されているか?
- 複数システム間でProduct IDは統一されているか?
- 現在のFrontendやLegacy Backendにしか存在しないBusiness Ruleはないか?
といった点を確認します。
このフェーズの目的は、Existing ECとAI Commerceに求められる要件とのGapを可視化することです。
2. ACP Integration Architectureの設計
すべてのAI向けLogicをEC Coreに直接実装する必要はありません。
システムの状況によっては、既存ECとAI Agentの間にACP Integration Layerを設けるアーキテクチャが有効です。
このLayerでは、例えば以下の役割を担うことができます。
- Data Modelの変換
- 複数Backendからのデータ統合
- Product Informationの標準化
- Authentication / Authorizationの制御
- Business Ruleの処理
- Logging / Monitoring
- EC Coreへの影響を抑えるためのAbstraction
これにより、大規模なECリプレイスを最初から実施することなく、既存資産を活用しながらAI Commerceへの対応を検証できます。
3. 全面導入ではなく、PoCから始める
AI Commerceを取り巻く環境は、現在も急速に変化しています。
そのため、最初から全商品・全購買フローを対象にするのではなく、
1つのCategory → 限定した商品群 → 1つのUse Case → 限定したUser Group
という形で、小さくPoCを開始する方法が考えられます。
PoCでは、例えば次のようなポイントを検証できます。
- 現在の商品データだけでAIは商品を正しく理解できるか?
- どのProduct Informationを追加・改善する必要があるか?
- ユーザーのIntentに対して適切な商品を提示できるか?
- 現在のArchitectureで必要なデータ更新頻度に対応できるか?
- Production展開・Scaleの前に何を改善する必要があるか?
検証結果をもとに、ACP対応範囲を段階的に拡大していくことができます。
IV.AI CommerceはECの新しいChannelになる可能性がある
これまで企業は、ECを主に以下のChannelに最適化してきました。
Web → Mobile → Marketplace
今後、ここに新しいChannelが加わる可能性があります。
AI Agent / ChatGPT
そうなれば、「EC最適化」という考え方そのものも変化していくでしょう。
これまでは、
「自社ECの商品はGoogleで見つけやすいか?」
が重要なテーマでした。
これからは、それに加えて、
「AIは自社の商品を正しく理解できているか?」
「顧客が自然言語でニーズを伝えたとき、自社の商品が適切な選択肢として提示されるか?」
「AIに提供される価格・在庫・Promotion情報は正確かつ最新か?」
といった観点も重要になる可能性があります。
これは、Digital Commerce Strategyにおける新しいレイヤーになるかもしれません。
V.Bunbu:Existing ECからAI-ready Commerceへ
すでにEC Platformを持っている企業にとって、最初のステップは必ずしもシステムを作り直すことではありません。
重要なのは、
Existing ECの現在地を把握する
→ ACPが求めるものを整理する
→ Gapを特定する
→ 既存システム資産を活かしながらAIと接続できるArchitectureを設計する
ことです。
Bunbuでは、以下のようなステップでACP対応に向けたコンサルティング・技術支援を行います。
EC Architecture Assessment
→ ACP Readiness / Gap Analysis
→ Integration Architecture
→ PoC
→ Production Roadmap
目標は、単に「ChatGPTと接続する」ことではありません。
AI Agentが顧客と商品の重要な接点の一つとなる世界に向けて、企業が現在持っているCommerce SystemをAI-readyにすることです。